風営法の改正
近年、ホストクラブで女性客が売掛金等の名目で多額の借金を負わされ、当該借金の返済のために性風俗店での稼働や売春が行われることがあることが社会問題となっていました。
そのような状況を改善するためには風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の改正が必要であるとの認識が高まり、警察庁は、令和6年7月に、規制の在り方を検討するため、大学教授らを構成員とした悪質ホストクラブ対策検討会を設置しました。
悪質ホストクラブ対策検討会は、接待飲食営業(ホストクラブ、キャバクラ等)について、健全に営まれれば国民に憩いと娯楽を与える有用な営業であると意外にも(?)評価しています。
ただ、悪質ホストは、客の社会経験の乏しさや担当ホストに対する恋愛感情等に付け込んで高額な注文をさせ、客に多額の借金を負わせた後には関係を有するスカウトのあっせんを通じて性風俗店勤務や国内外での売春を求めることがあると指摘しています。
以上のような実態からホストクラブへの新たな規制が必要であるとしましたが、立法技術上ホストクラブに限定して規制することは困難であり、他の接待飲食営業(キャバクラ等)にも規制を及ぼすことになるため、規制は他の業態であってもおよそ認められないような悪質な行為に限定することが適当であるとしました。
悪質ホストクラブ対策検討会の考え方に沿って、改正風営法が成立し、令和7年6月28日に施行されました。ホストクラブだけでなくキャバクラ等にも規制は及ぶことになります。
まず、客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制として、①料金に関する虚偽説明、②客の恋愛感情につけ込んだ飲食等の要求、③客が注文していない飲食等はしてはならないと規定しています(18条の3)。
次に、悪質に取り立てる行為の規制としては、①客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫、②威迫や誘惑による料金の支払等のための売春、性風俗店勤務、AV出演等の要求をしてはならないと規定しています(22条の2)。
さらに、性風俗店を営む者がスカウト等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うこと(いわゆる「スカウトバック」)を禁止しています(28条13項)。
この度の風営法改正により、いわゆる色恋営業一般が禁止されることになったと誤解する向きもあるようです。
色恋営業というのが何を指すのかについてはよくわからないところもあるのですが、仮に色恋営業を客の恋愛感情を利用した営業と理解するのだとすれば、風営法改正により色恋営業一般が禁止されたということはありません。色恋営業の中の特定の行為が規制の対象ということになります。
具体的には、接客従業者(ホスト、ホステス)と恋愛関係にあると客が誤信しているときに、飲食等をしなければ接客従業者との関係が破綻すると告げて、又は、接客従業者に業務上の不利益が生じることを告げて、客を困惑させて飲食等をさせることが規制の対象ということになります。