接待飲食営業の広告・宣伝規制
いわゆるホストクラブやキャバクラがキャストのランキング、役職、売上等を記載した看板等を取り替えているという報道がされていました。
これは、風営法改正に伴い警察庁が出した2つの通達(令和7年5月30日付通達及び同年6月4日付通達)により起きたことといえます。*1、2
風営法16条は、「風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない。」としています。
警察庁は、まず、令和7年5月30日付通達で、接待飲食業において、営業に関する違法行為を助長するような歓楽的・享楽的雰囲気を過度に醸し出す広告・宣伝は、新たに風営法16条の規制の対象となるとしました。*3
そして、令和7年6月4日付通達で、新たに規制の対象となる広告・宣伝の例として、接客従事者の営業成績を示す文言又は営業成績が上位であることを推認させる文言の表示(「◯億円プレイヤー」、「指名数No.1」、「幹部補佐」、「新人王」など)、接客従事者間での競争を強調する文言の表示(「売上バトル」など)、接客従事者を応援することを過度にあおる文言の表示(「〇〇を推せ」など)が挙げられています。
通達では、看板等の広告「物」が風営法16条の規制の対象となるとしています。
警察は今のところはSNSによる広告及び宣伝は規制の対象として考えていないように見えます。
以上のような風営法16条の解釈変更は警察庁の通達によりなされています。
通達とは行政組織内で効力を有するものであり、一般国民に対して法的効果があるものではありません。
とはいえ、裁判所により通達の解釈が否定されない限りは、警察からは通達に従い行政指導、行政処分を受けることになるので、通達を守らないことは事実上難しいといえるのでしょう。
なお、通達は一般国民に対して法的効果を有するものではないので、通達に反するからとして接待飲食営業者に対して行政指導等をすることは正しくなく、あくまで風営法16条に反するから行政指導等をするということになります。
*1
風営法は、飲酒、ギャンブル、性等に関連した営業を規制する法律です。
正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といい、風適法と呼ばれることもあります。
*2
通達とは、上級行政機関がその指揮監督権に基づいて下級行政機関の権限行使ないし事務処理を指揮するために文書で発する命令のことをいいます。
*3
「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とされています(風営法2条3項)。
飲食物の提供に通常伴う単なる接客サービスの程度を超えたもの、例えば、特定少数の客の近くに座り談笑の相手をすること、特定少数の客の近くで一緒にカラオケを歌うことなどが該当するとされています(平成30年1月30日付通達)。
ホストクラブやキャバクラは「接待」をウリにした業種であるといえるでしょう。