離婚後の共同親権
今国会において、共同親権が選択肢となる民法改正案が審議されています。
現在は、離婚する場合、父又は母が親権を持つ単独親権となっていますが、改正案では、両親は合意により単独親権か共同親権を選択できるとしており、合意ができないときには家庭裁判所が単独親権か共同親権か決めることとなります。
多くの人が気になる点は、①裁判所はどのような基準で単独親権か共同親権かを決めるのか、②共同親権が選択されたとき、同居親は単独でどのような行為ができるのかではないでしょうか。
改正法案では、裁判所の共同親権か単独親権かの判断基準は子の利益であって、子の利益を害すると認められるときは単独親権としなければならないとされています。
子の利益を害する場合として、①父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき、②父母が共同して親権を行使することが困難と認められるときが挙げられています。
父母が共同して親権を行使することが困難と認められるか判断するに際しては、①父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、②協議が整わない理由、③その他の事情を考慮するとしています。
いわゆるDV・モラハラは①に当たるということになりますが、DV・モラハラの証拠が充分にあることが多いとはいえず、その立証は容易なものでありません。
法文上は、DV・モラハラだけでなく、その他の様々な事情をも考慮して「共同して親権を行使することが困難」か否かが審査されることとなっています。弁護士としての経験からは、「共同して親権を行使することが困難」な事案として高葛藤事案が思い浮かびますが、どのような高葛藤事案の場合に裁判所が「共同して親権を行使することが困難」と認めてくれるかが重要となるのでしょう。
改正法案では、共同親権が選択されたときでも、一方の親は、「急迫の事情」がある場合や、「監護及び教育に関する日常の行為」については単独で親権を行使することができるとされています。
報道によれば、衆議院において、「急迫の事情」「日常の行為」の意味があいまいであるという批判を受け、「急迫の事情」「日常の行為」を具体的に示すガイドライン制定を政府に求める付帯決議がなされたとのことです。
そのようなガイドラインは裁判所を法的に拘束するものではありませんが、実務上は極めて大きな影響を持つものと思われます。
【改正民法案819条7項】
裁判所は、第2項又は前2項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第1項、第3項又は第4項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
(山崎)